乗り物はお好きですか。31歳を迎えてもなお、男の子だった頃の気持ちを忘れていない僕は今なお乗り物にときめきます。特に、あまり知らない土地で珍しい乗り物に乗ると、テンションが上がるというものです。
徳島県にも、近年旅客営業を始めたばかりの面白い乗り物があります。その名も「デュアル・モード・ビークル」こと「DMV」です。徳島県海陽町と高知県東洋町とを結ぶ私鉄、阿佐海岸鉄道が導入したDMVの最大の特徴は、道路と線路の両方を走れることです!
コロナ禍でDMVの旅客営業の開始が遅れ、徳島に住んでいる間に乗ることは叶いませんでしたが、今回満を持して乗車してきました1。
DMVとは?
DMVとは、列車が走るための軌道(線路)と、自動車の走る道路の双方を走行できるように改造されたバスのことです。
日本においてはもともと、JR北海道が赤字路線の救済策として本格的に開発を進めていたのですが、紆余曲折あり凍結されました。
その後「全線高架であることから踏切がない」「分岐が無いのでDMVの脱線リスクも少ない」「利用客の数から輸送量不足が問題になりにくい」等の条件が揃った阿佐海岸鉄道阿佐東線が本格的にDMVの実装に向けて動き出し、2021年12月に世界初の旅客営業を開始したというわけです。現在、緑(すだちの風)、赤(阿佐海岸維新)、青(未来への波乗り)の3種類の車両が走行しています。
当ブログでは過去にもDMVについて紹介しています。DMVの旅客運行開始に先んじて、徳島市の阿波おどり会館にて実施されたDMVお披露目イベントにて実物を見学したり、阿佐海岸鉄道の方に裏話を聞いたりなどしました。
詳しくは以下の記事をご覧ください!
DMVの運行区間と乗り方について
現在、DMVは海陽町の阿波海南文化村を起点に、東洋町の甲浦駅を経由して、海陽町の道の駅宍喰温泉まで運行しています(室戸までの便も土日祝限定で1往復あります)。
阿波海南駅から甲浦駅にかけては鉄路となっており、阿波海南駅にてDMVはバスモードから鉄道モードへとモードチェンジします。そして、甲浦駅にて再びバスモードにチェンジし、道の駅宍喰温泉まで向かいます。
DMVは基本的に予約制となっており、発車オーライネットにて便を指定し、座席を予約して乗車します。予約無しでの乗車はできなくもないのですが、乗車は予約客優先となっています。DMV自体がそもそもマイクロバスを改造したものなので、定員は22名ほどとなっています。ただし、今回の訪問時は乗客が僕含め2~3組であったため、余裕はありました。
DMVに乗車する際には、阿波海南駅の利用が便利です。JR牟岐線から直接乗り継ぐこともできますし、駅近くにDMV乗車用の無料駐車場もあるため、車で訪問してDMVに乗ることも可能です。また、無料休憩室があるほか、DMVを近くから安全に撮影可能な撮影スペースもあります。
DMVに乗ってみた!
阿波海南駅の休憩スペースで待つことしばし。線路の向こうからDMVがやってきました。訪問時のDMV営業開始2周年に合わせ、フロントに「2」のマークが付けられています。
線路と陸路の転換点である「モードインターチェンジ」のところで一旦停車すると、レールを走るための車輪が収納されていきます。以前作ったDMVのペーパークラフトでも再現されていたギミックですが、生で見ると感動しますね!
ですが、今回乗車するのはこの緑のDMVではありません。この便は阿波海南駅を発ち始点の阿波海南文化村へと向かいます。ちなみに、DMVは車体の重量の都合上レールに分岐を設けられず、ゆえにレール上を1台しか走れない(駅で他のDMVが通過するのを待つことができない)という制約もあり、ダイヤもこのことを前提に組まれているようです。
走り去っていったDMVを見送ってしばし待つと、ようやく今回乗車する赤いDMV(阿佐海岸維新)がやってきました。早速、予約した最前列の席に着きます。そして、終点の道の駅宍喰温泉までの旅が始まります。同乗したのは親子連れで、ローカル線の乗り継ぎに関する本やカメラを持っていました。鉄道好きのお子様がDMVのためにここまではるばるやってきたということですね!
まずはDMVが阿波海南駅からの線路を走るために、モードチェンジします。当然ながら乗車中はモードチェンジの様子を見ることはできないのですが、代わりにアナウンスと共に阿波おどりのお囃子を流しながら、車内のモニターにモードチェンジの様子が映し出され、モードチェンジをちょっとした乗車中のアトラクションとして楽しむことができるようになっています。僕も、乗り合わせた鉄道好きの子供も大興奮でした。これを生で体験するためにはるばる名古屋からやってきたわけですよ!!
ここからDMVは線路を進んでいくのですが、見慣れたマイクロバスが線路を走っている様子はどこかシュールで面白かったです。
車窓は全面オーシャンビューというわけでもないのですが、時折太平洋が見えます。リアス式の入り組んだ海岸線が美しいです。
そして、海部駅のところには謎のトンネルがあります。過去にテレビ番組「ナニコレ珍百景」でも紹介されていました。ちなみにかつては山があったようですが、開拓の末に山が無くなりトンネルだけが残ったのだとか。
トンネルと言えば、鉄道用の照明の無いトンネルの中を走るので、その時は少しだけ心細さがありますね!道路のトンネルは照明がありますし、逆に列車は常時車内の照明が点いていますが、DMVは照明の暗い状態で真っ暗なトンネルの中に入っていくので、ちょっと怖さがあります。
甲浦駅で線路が終了し、再びモードチェンジして、今度は道路を進みます。先ほどまで線路を走っていたはずのDMVが、今度は道路を走るのが面白すぎます。
こうして、DMVは無事に終点の道の駅宍喰温泉に到着したのでした。
道の駅宍喰温泉ではDMVグッズが多数販売されています。こちらは先日投稿した道の駅宍喰温泉の記事にて紹介しておりますので、そちらをご覧ください。
帰りは同じルートを、今度は阿波海南文化村に向けてスタートしました。
DMVに乗ってみた感想としては、やはり「道路を走った後に線路を走る」という車窓の風景の大きすぎる変化が楽しかったです。また、ボンネットの飛び出た車両の見た目もまるでマスコットのようにかわいらしいです。それに、変形までするときたものですから、僕の中の男の子の心は興奮しっ放しでした。沿線の自治体や店舗もDMVを熱烈に応援していたので、観光資源としても期待されている様子でした。まあ「道路と線路の両方を走れるバスに乗る経験」なんてここでしかできない唯一無二のものですからね。実際にDMV乗車を目的に遠方からやってくる方も多くいました。というか僕自身がそうですね(笑)
DMV まとめ
阿佐海岸鉄道で2021年12月より旅客営業の始まったDMVは、徳島県海陽町の阿波海南文化村から、高知県東洋町の甲浦駅を経由して、同じく海陽町の道の駅宍喰温泉、または高知県室戸市の室戸岬を繋いでいます。
道路と線路の両方を走れる唯一無二の車両で、阿波海南駅と甲浦駅の間は線路を走行します。乗車には基本的に発車オーライネットからの事前乗車予約が必要ですが、空席の状況によっては予約無しでの乗車も可能です。
DMVはとても面白い乗り物です。ボンネットの飛び出たかわいらしいシルエットの小さなバスに乗り、車窓から海岸線、レール、道路といった様々な景色を楽しめるのは唯一無二の体験です。おまけに変形もします。乗り物好きの喜ぶ要素がたっぷりです。誰しも乗り物が好きな子供だった時代があるはずですが、そんな童心を思い出させてくれます。
わざわざ見に行って乗りに行く、それだけでも面白い乗り物です。阿佐海岸鉄道や沿線自治体も重要な観光資源としてDMVを推しています。気軽に行くには少しばかり遠い場所ではありますが、太平洋の風景を楽しみながらDMVに揺られる時間は贅沢そのものです!沿線の施設である海の駅東洋町や、道の駅宍喰温泉と併せて楽しむのも良いかもしれません。
なお、宍喰駅(道の駅宍喰温泉とは別)にはDMVグッズや、鉄道版の御朱印「鉄印」があります。
JR牟岐線・阿佐海岸鉄道阿佐東線 阿波海南駅
徳島県海部郡海陽町四方原西
阿佐海岸鉄道のWebサイトはこちら↓
コメント
DMVそう言えばどうなったんだろうと思ったら、JR北海道のは凍結されていたんですね。
面白そうですね。実は四国にまだ行ったことがないのです。サンライズ瀬戸に乗って行きたいと思っているのでハードルがちょっと上がっています。来年再雇用になるので、有給消化があるから、その時がチャンスかなと思ってます。だけどJRって1ヶ月前からじゃないと列車の予約が出来ないのが不便ですよね。
コメントありがとうございます。
DMVは北海道のものが頓挫した後に、四国にて実装されました。運行距離は限られており、まだ発展途上感はありますが、車窓の風景はとても楽しいし貴重な体験になりました。
サンライズ瀬戸は寝台列車でしたよね。あれも乗ってみたいです。
四国は美味しいものがたくさんありますので機会があればぜひお越しください!
情報が少し古いですが、徳島県の情報ならこのブログも参考になるかと思います(笑)