地下鉄名港線名古屋港駅からすぐの場所にある、名古屋港ガーデンふ頭にお邪魔しました。名古屋港ガーデンふ頭には、海を眺められる公園が整備されているほか、様々な観光スポットが揃っています。
今回は、そんな名古屋港の観光スポットの一つである、博物館「南極観測船ふじ」を紹介します!
南極観測船ふじは実際に日本の南極観測で活躍した観測船で、現役を退いた後、1985年に名古屋港ガーデンふ頭に係留され、南極観測の歴史を伝える博物館となりました。
南極では、今なお観測が続けられています。日本の南極観測の歴史や、厳しい環境を航行するうえでの工夫を学びつつ、氷に閉ざされた未知の大陸である南極へのロマンも感じることのできる施設となっています!
前回の名古屋港観光記事はこちら↓
南極までの長い船旅に思いを馳せる!ふじ船内の様子
南極観測船ふじの入館料は、大人・高校生が300円、小・中学生が200円、幼児(4歳以上)が無料となっています。また、南極観測船ふじと名古屋港ポートビル展望室、名古屋海洋博物館を合わせたお得な3施設共通チケット(大人・高校生710円、小・中学生400円、幼児無料)や、この3施設に名古屋港水族館を合わせた4施設共通チケット(大人・高校生2440円、小・中学生1210円、幼児500円)もあります。
南極観測船ふじが活躍したのは、1965年から1983年までの13年間です。南極観測の支援のために作られた、日本で初めての本格的な砕氷船です1。南極観測隊や、観測隊のための食糧、燃料、資材、観測機器を日本から南極まで輸送するのに活躍しました。
東京から南極の昭和基地までは約14000kmあり、行って戻ってくるまでの航海期間は5カ月に及びました。さらに、南極近海は気象条件が厳しい上に波も高く、海も凍っているため、非常に厳しい条件での航海となりました。決して優雅な船旅ではなかったわけですね。
その後、船自体の老朽化と、観測物資や輸送量の拡大に伴い、ふじの輸送能力に限界が訪れたため、南極観測船としての役割は後継の「しらせ(初代)」に譲り、ふじは引退することになりました。そして、1985年に名古屋港ガーデンふ頭に係留され、南極観測の歴史を伝える博物館となりました。
入口より入場すると、最初にあるのは食堂です。ここで観測隊の面々が食事をとりました。数か月に及ぶ航海では娯楽も少ないと思われますし、食事は数少ない楽しみであったことは想像に難くありません。
食堂のイスとテーブルは、悪天候の中で危険が無いように固定されていました。
食堂のテレビは、乗組員たちの貴重な娯楽の一つだったようです。日本近海では日本のテレビ番組を視聴し、遠洋では録画したドラマを流していたのだとか。
蝋人形が置かれ、厨房の様子も再現されています。
厨房にあったもので興味深かったのは「もやし栽培器(緑の装置)」と「アイスクリーム製造器(冷蔵庫の右隣)」ですね。もやしとアイスクリームを船内で自給していたのには理由があり、もやしは長期にわたる航海で不足しがちな野菜を補うために、そして、アイスクリームは過酷な極地での任務をこなすべく効率的にカロリーを摂取するためにそれぞれ栽培・製造されていたようです。とても理に適っていますね!
食堂を見た後は、順路に沿って船内を進んでいきます。通路は狭いです。
通路からは船室を覗けるようになっています。
非常用の備品類が展示されていました。右側の赤いものは非常食で、職員の方曰く、レプリカではなく本物が展示されているのだとか。
こちらは消火設備です。油や電気系統等、あらゆる火災を想定しているようです。
こちらのそろばんのような装置は、荷物を運ぶための台車です。
観測員の居室は学生寮のような雰囲気です。こちらにも蝋人形が置かれ、当時の雰囲気が再現されています。いかんせんとても長い航海なので、ルームメイトとはとても仲良くなれそうな気がします。
一方で、一般乗組員はこのような大量の簡易ベッドの並んだ場所で眠っていたようです。カプセルホテルよりもきついですね!
医務室と理髪室、歯科治療室もありました。長い航海を支えるために、様々なスタッフがいたわけですね。(理髪室に関しては理容師ではなく手先の器用な隊員が担当していたそうですが)
南極観測船ふじはフェリー等と比べると小さいのですが、小さい船体の中に、長い航海に必要な様々な設備や施設が揃っています。多機能な乗り物は、それだけで男心をくすぐります!14000kmという途方もない長距離の航海で、乗組員たちや観測隊が何を考え、どのような生活をしていたか、想像するだけでワクワクしてきますね。
南極観測の歴史を学べる博物館エリア
デッキの部分には、南極の博物館があり、日本や世界の南極観測の歴史、南極を目指した冒険家たちの年表、南極観測の成果をわかりやすく紹介しています。
南極で行われている調査は様々で、例えば氷や地質の調査、生態系の調査、オゾンホールの調査等が行われています。人間の暮らしていない南極は、自然環境の保存状態が良く、例えば氷の中に閉じ込められた太古の空気から太古の時代の気候変動を予測したりするのだそうです。
南極観測船ふじが活躍していた時代には、日本の観測隊は世界で初めて南極隕石やオゾンホールを発見しています。
南極では、他国と協力しての調査任務も行われています。(領有権こそ主張されてはいますが)南極はどの国の領土でもなく、国境もありません。南極というのは、人間が境界に囚われずに協力して研究に打ち込める、ある意味で理想郷のような場所なのかもしれないなと思いました。
こちらは南極の氷の実物です。(写真左側)
南極の氷は、多くの気泡を含んでいて、全体が白っぽいのが特徴です。この中に閉じ込められた気泡が、太古の時代の空気だったりするんですよね。「南極は地球のタイムカプセル」という例えを見ましたが、言いえて妙だと思います。
南極での暮らしぶりがわかる資料も展示されていました。
こちらは昭和基地で使用された運転免許証です。
南極はあくまで日本領土ではないので運転免許証は関係ないような気もしますが、ジョークグッズというかシャレで作られたものなのでしょうか?内容も「先住民(ペンギン等)に対する交通違反はその罪を2倍とする」というユーモラスなものとなっています(笑)
こちらは昭和基地にて発行されていた「南極新聞」と「南極圏通行証書」です。小学生の頃、新聞係に立候補して学級新聞という名の自分語り紙ブログを書いていたのを思い出しました(笑)
新聞には「日本では若水を汲み、初詣、あるいは初日の出を拝む等のやることがあるが、南極では太陽が沈まないのでそれも無い」と、新年を祝う内容が書かれています。また、この写真では全く見えないのですが、南極圏通行証書のほうには
南極の支配者ペンギン皇帝閣下の同意と指示により、貴殿に対して下記のとおり証明を付与します。
記
1 貴殿は昭和57年12月 日砕氷船ふじにより東経 度 分において南極圏を通過しました。
2 貴殿は同圏内に浮遊する氷盤等を含み南極大陸への上陸と居住及び同上空の飛行について名誉と権限を保有します。
3 すべての先住者と諸生物に対する友愛と協調を貴殿の義務に加えます。
と書かれています。
厳しい極地での任務を乗り切るために、日々の暮らしの中にユーモアを織り交ぜていた様子がわかって、とても印象的な展示物でした。
南極観測船ふじ まとめ
南極観測船ふじは、昭和時代に南極観測で活躍した観測船・ふじを再利用して整備された博物館です。
当時と変わらない船室の様子が静態保存されていたり、日本や世界の南極観測の歴史および成果について展示されていたりします。
南極という大陸があることは知っていても、そこが具体的にどういう場所であるかや、そこで具体的にどのような調査が行われ、何がわかるのかについては知らない方も多いかと思いますが、南極観測船ふじでは南極までの長い旅路に思いを馳せながら、南極について興味を持てる施設です。
入館料は
大人・高校生 300円
小・中学生 200円
幼児(4歳以上) 無料
となっています。
また、3施設共通入場券(南極観測船ふじ+名古屋海洋博物館+名古屋港ポートビル展望室)は
大人・高校生 710円
小・中学生 400円
幼児(4歳以上) 無料
であり、4施設共通入場券(上述の3施設+名古屋港水族館)は
大人・高校生 2440円
小・中学生 1210円
幼児(4歳以上) 500円
となっています。
南極観測船ふじ
愛知県名古屋市港区港町1-9 名古屋港ガーデンふ頭
「名古屋海洋博物館」見学に続く…↓
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