ラーメンは懐の広い料理だと思います。「かえしと出汁からなるスープに、中華麺を入れる」というフォーマットに従うと成り立ちますし。出汁に注目しても、鶏ガラもあれば、豚骨や魚介もあります。かえしも、醤油があれば塩や味噌もあります。
個人的に、ラーメンの印象に最も大きく影響する要素はスープだと思っています。スープは麺やトッピングに絡みつつ、その一杯の味の方向性を決めています。そして、店舗ごとの差が最も大きく表れる要素でもあると思います。あっさりとこってり、醤油と味噌、鶏ガラと魚介…。スープが違えば一杯の印象も全然違いますが、一方で全て「ラーメン」という括りでまとめられるのだから面白いものです。
僕が最近食べてとても気に入ったのは「麺や六三六」のラーメンです。煮干しと昆布で出汁をとり、さらに豚骨と鶏ガラと野菜を合わせた、様々な旨味の溶け込んだスープが特徴の一杯です。化学調味料や背脂などを添加せずに作り上げたスープには様々な旨味が溶け込んでいて、最後の一滴まで飲み干したくなってしまいます!
旨味の重なるとろみスープ!「特製六三六らーめん」

麺や六三六は東海と関西に店舗を展開しているラーメン店で、愛知県には大須とウインクあいちの地下に店舗があります。今回訪問した「麺や六三六 大須本店」は大津通沿い、万松寺駐車場ビルの入口近くにあります。
店内は古民家風の装飾が施された和風の雰囲気で、22席のカウンター席から構成されています。食券制ですが、2025年7月現在では新札に対応していない点に注意が必要です。

看板メニュー「六三六らーめん」にトッピングを増量した「特製六三六らーめん」を注文しました。茶褐色のスープには粉砕された煮干しも確認できます。たくさんの旨味が溶け込んでいることに、見た目から説得力があります。
そんなスープを一口啜ると、情報量に驚かされます。豚骨や鶏ガラに由来する力強い旨味に、煮干しのじんわりと響くすっきりとした複雑な旨味に、煮溶けた野菜の甘味…。それらが一気に流れ込んできます。特に強く感じられるのは野菜の甘味で、この甘味がスープ全体の味を優しくしながら、味に一体感を生んでいます。スープの質感はややとろっとしていますが、そのとろみは全て野菜に由来しているのだといいます。濃厚なのですが、その満足感は脂によるものではなく、折り重なる旨味によるところが大きいです。これは、美味しいぞ…!

麺はストレートの中細麺です。弾力と歯切れの良さがありつつも、スープとの馴染みも良好です。
トッピングとして、ネギ、チャーシュー、海苔、煮卵、メンマ、なると、スライス玉ねぎが入っています。チャーシューは厚く大切りで食べ応えがあり、甘辛いタレの味がとてもよく染みています。メンマも極太で、チャーシューと合わせて食感が非常に楽しいです。
目立たないように見えて、意外に良い仕事をしていると感じたトッピングはスライス玉ねぎです。生の状態で入っているのですが、スープに入ってある程度熱が通ることで、生玉ねぎの刺激と、加熱した玉ねぎの甘味の良いとこ取りのような味になるんですよ。そして、玉ねぎの甘味はスープの味とも相性が良好です。

ラーメンのスープは飲み干さないように常日頃から自重しているのですが、六三六らーめんのスープは折り重なる旨味があまりに美味しすぎて、気づけばあっという間に空になってしまいました!
彩りが楽しくてどこか懐かしい「大根焼きめし」

麺類に+330円することで、サイドメニューの「大根焼きめし」をセットにできます。単品では530円となっています。大根の葉の緑色が映える見た目です。
パラパラではなくしっとりとした質感の焼き飯です。味付けは醤油系で、卵の焦げ目の香ばしさと、大根の葉のシャキッとした食感が楽しい一品です。このしっとりした質感が、さながら「中華料理店の本格チャーハン」ではなく「家庭で作る焼き飯」そのもので懐かしさを覚えますし、甘く濃厚な六三六らーめんのスープと一緒に食べたときの相性も良好です。甘く複雑な味の中で、焦げ目の香ばしさが光るんですよ…。
麺や六三六のサイトによると、大根の葉は「最近手に入りにくくなった」といいます。確かに、スーパーで大根を買っても、葉っぱは根元の方から切られちゃってることが多いですからね!道の駅の農産物直売コーナーなんかだとしばしば見事な葉っぱが付いているのを見かけますが、それでも若干物足りないです。「大根の葉だけ集めたパック野菜」って需要あると思うんですが、大根農家さんどうですか!(え)
限定メニュー「極め濃厚煮干しらーめん」

訪問時(2025年7月)には、限定メニュー「極め濃厚煮干しらーめん」が提供されていました。曰く「通常の3倍量の煮干しを丸ごと使用し、風味豊かなスープにしました。煮干しが苦手な方はご遠慮下さい。」とのことです。六三六らーめんは様々な素材の旨味が調和したスープが美味しい一杯でしたが、煮干し含有量を一気に尖らせたスープは果たしてどのような味わいなのか、非常に気になります!

麺は六三六らーめんと同様の中細麺です。スープは六三六らーめんと比較すると、煮干しの含有量の分、やや黒ずんでいる感じがしますが、質感は六三六ラーメンと同じぐらいの、ややとろみがある程度です。圧倒的に煮干しを含んだ「セメント」とまではいきません。
それでも、一口スープを啜ると、煮干しの複雑な旨味と苦味がかなり凝縮されているのがわかります。一方でベースは野菜の甘味が出た六三六らーめんのそれなので、煮干しが強いながらも、様々な味の重なるハーモニーを感じることのできる味です。
トッピングとして、チャーシュー、煮卵、鰹節、とろろ昆布、刻み玉ねぎが乗っています。とろろ昆布と鰹節がスープの旨味をブーストしており、さらにとろろ昆布の酸味はスープの味と相性が良好です。刻み玉ねぎは、六三六らーめんに入っているスライス玉ねぎとは違い、辛味の刺激を楽しめます。
「煮干しが苦手な方はご遠慮ください」とのアオリがありますが、極め濃厚煮干しらーめんは、むしろ濃厚煮干しラーメン初心者でも比較的取っつきやすい一杯であるように思います。
麺や六三六 大須本店 まとめ
麺や六三六大須本店は、大須の大津通沿い、万松寺駐車場ビルの入口近くにあるラーメン店です。
看板メニューの「六三六らーめん」は、煮干し、北海道産昆布、鶏ガラ、豚骨、野菜といった、数多くの素材からじっくりと旨味を抽出して作った濃厚スープが美味しい一杯です。濃厚と言いつつも、その濃厚さは脂ではなく豊富な味の情報量がもたらすもので、特に野菜の甘味がスープの味を優しくしながら、味に一体感を生んでいます。思わず飲み干したくなってしまう美味しさです。
今回注文したメニュー以外にも「特製つけ麺」「煮干し塩そば」「にぼし冷麺1」といった麺メニューを提供しているほか、サイドメニューには「いかラーごはん」なる激辛飯もあります。まだまだ深掘りし甲斐がありそうです。
麺や六三六 大須本店
愛知県名古屋市中区大須3丁目30-32
営業時間:11:00~22:00
※訪問時点での情報です。
麺や六三六のWebサイトはこちら↓
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