皆様はフナを食べたことはありますか?フナといえば、全国各地の川や池で気軽に釣れる身近な魚ですが、一方で現代においては「食材」としてみなされることがあまり無いように思います。
ですが、フナを食べる文化は全国各地にあります。僕の地元である岡山県にも「ふなめし」という、フナのミンチを根菜と共に炒めてだし汁を加え、油揚げを入れて煮込んだものをご飯にかけて食すという郷土料理があります。
東海地方にも、揖斐川・長良川・木曽川の中流域から下流域にかけてのエリアにて食べられているフナ料理があります。その名も「ふな味噌」で、フナと大豆を赤味噌でじっくりと煮込んで作る料理です。僕はこの料理の存在をデイリーポータルZの記事にて知りました。
住宅街のお世辞にも綺麗といえない川や、小学校の小さなため池で泳いでいる印象しかなかったフナという魚が、岡山のふなめしや東海のふな味噌といった郷土料理の材料として使われているというのがとても興味深く、フナとはどんな味がする魚なのか非常に気になっていました。とはいえ、味を確かめるにはまず食材としてのフナを入手するという非常に高いハードルを越えなければなりません。そもそも中の人は釣った魚を針から上手に外せませんし(え)
ですが先日、意外な形でふな味噌を食べるチャンスがやってきました。アピタ千代田橋店にて買い物をしていたとき、総菜コーナーのところにある漬物店「丸越」にて、こだわった種類豊富な漬物の中に混じって「新物入荷」のポップと共にふな味噌が置かれていたのです!
早速購入し、その味を確かめてみました!
ふな味噌って何?どうやって食べるのが美味しいの?
改めまして、ふな味噌というのはフナと大豆を鍋でじっくりと煮込んでいき、5時間ほど火を入れたら赤味噌と砂糖を調合したタレを加えてさらに煮込んでいって作る料理です。地域や家庭ごとに作り方が微妙に異なっているのですが「5時間ほど火を入れてからさらに煮込む」という言葉の通り、完成まで非常に時間のかかる料理なのだとか。まあ現代では圧力鍋で大幅に時短できますが。
特に、寒い時期のフナは寒鮒と呼ばれ、脂が乗っているだけでなく、そもそもエサをあまり食べないことから身も泥臭くなりづらく、食材として扱いやすいのだそうです。アピタの丸越にてこの時期(2024年10月下旬)に「新物」として出回っていたのは、そういうことだったのですね。また、揖斐川・長良川・木曽川では寒鮒漁が昔から盛んであり、そのため、フナが貴重なたんぱく源として珍重されていたようです。
丸越の店員さんに美味しい食べ方を聞いてみたところ、
・ご飯の上に乗せて食べる。
・お餅の上に乗せて食べる人もいる。
・温めると川魚特有の臭さが出やすいので、冷えたままだと食べやすい。
との情報を頂きました。
頭の先から骨まで丸ごと食べられる!!
というわけで、店員さんに教わった通り、ご飯の上に冷蔵庫から出した冷たいままのふな味噌を乗せて食べてみました!なかなか大きめのフナが濃厚な赤味噌ダレでしっかりと煮込まれており、たくさんの大豆も一緒に入っています。
箸を入れてみると、フナの身があまりにも簡単にボロボロと骨ごとほぐれていきます。さんまの蒲焼や鯖の水煮の缶詰を思い出します。ご飯と一緒に、ふな味噌を早速頂いてみます!
おおっ!柔らかい!けっこう旨いぞ!
甘辛い赤味噌ダレがフナの身にしっかりと染みており、さらにフナ由来のじんわりとした魚の旨味も感じられて、とてもご飯の進む味わいです。フナはホクホクと柔らかい食感ですが、鯖ほど脂は乗っていない印象です。よく味わってみると確かに、丸越の店員さんが言っていたような「クセ」(おそらくは川魚が食べている藻の味?)を感じないこともないのですが、味噌ダレの味が濃いのでほぼ気にならず、むしろアクセントとすら感じられます。
そして、何より驚くのはその柔らかさです!さんまの蒲焼や鯖の水煮の缶詰のように、骨ごと食べられるのは想像に難くなかったのですが、まさか固い頭の部分もそのままバリバリと食べられてしまうなんて…!これも5時間以上時間をかけ、じっくりと煮込んでいるからこそなのでしょうね。
ふな味噌はフナの食材としてのポテンシャルを感じさせてくれる料理ではありましたが、一方で、食べながら調理の難しさも感じさせられました。というのも、食べられるほどに柔らかくなっていたとはいえ、骨がかなり多かったんですよ。前述のデイリーポータルZの記事でも、フナの身にはアルファベットのYの形をした抜きづらい小骨がたくさん入っていると書かれていました。ゆえに、焼き魚や煮魚のような、骨を外して食べなければならない調理法だと食べるのが大変そうです。だからあまり食材として流通しないんでしょうね…
ふな味噌 まとめ
ふな味噌は、東海地方の揖斐川・長良川・木曽川中~下流域の地域にて食べられている郷土料理です。
冬の時期の脂の乗った寒鮒と大豆を弱火で長時間じっくりと煮込み、そこに赤味噌と砂糖のタレを入れてさらに汁気が無くなるまで長時間煮詰めていくことで完成します。
現代では家庭で作られる機会は減ったようですが、冬の味としてふな味噌を食べたいという需要はあるようで、東海圏では寒鮒の季節にスーパーマーケットの惣菜として販売されることがあります。2021年に東海圏のマックスバリュにてふな味噌が販売されていたという情報もありました。
今回はアピタ千代田橋店の総菜売り場にある漬物店の丸越にて購入しました。アピタ千代田橋店の丸越では、毎月最終木曜日にふな味噌を入荷しています。丸越は東海圏のみならず、全国各地のショッピングモールや百貨店に出店していますが、東海圏以外の店舗でふな味噌を購入できるかは不明です。
味の染みた、ご飯の進む味わいです。興味のある方はぜひ試してみてください!
農林水産省のふな味噌紹介ページはこちら(レシピもあります)↓
参考にさせていただいたデイリーポータルZの記事はこちら↓
丸越のWebサイトはこちら↓
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