スーパーマーケットでの買い物の時間は、貴重なネタ探しの時間でもあります。地域のスーパーマーケットにはご当地の企業の製品がたくさん置かれており、注意深く観察すると、地域の生活に馴染んだご当地商品をたくさん見つけることができます。当ブログでも過去にスーパーマーケットで見つけたご当地商品の「天然水スパークリング 濃い旨レモン」や「横丁ダルマサワー」を紹介しています。
今回紹介するのは、面白い名前のご当地おやつです。
その名も「生せんべい」です!
って、なんじゃそりゃ!!
これを焼くとせんべいになるのか。それともぬれせんべいの仲間みたいなものなのか。疑問は尽きません。
こうなったら、購入して実食あるのみです!
優しい甘味ともっちり食感!蜂蜜生せんべいと黒糖生せんべい
生せんべいは、愛知県半田市の和菓子屋「総本家田中屋」が製造・販売している和菓子です。知多半島を中心に、愛知県内各地のスーパーマーケットやお土産屋、百貨店、サービスエリア等にて販売されています。今回はイオンモールナゴヤドーム前にて購入しました。
原材料は、
白:米(国産)、上白糖、蜂蜜、食塩、小麦粉
茶色:米(国産)、黒糖、食塩、小麦粉
となっています。すなわち無添加です!なお、賞味期限は7日間となっています。
袋の外から触った感じでは、さながら薄いういろうのような弾力を感じます。これを焼いたらせんべいになる… というわけではなく、そのまま食べるのが正解です。
というわけで、まずは茶色いのから頂いてみます!
なるほど。確かにもっちりとしていますが、歯切れが良くて粘つかない食感ですね。当然せんべいでもありませんし、ぬれせんべいとも全然違います。似ているお菓子を挙げるなら、やはりういろうなのですが、ういろうよりも粘り気が少ない気がします。そして、黒糖の甘味と風味が濃いです!弾力が強く固めなので、必然的に多めに咀嚼することになるのですが、噛めば噛むほど優しい甘味が出てきます。これは渋いお茶と一緒に食べたいお菓子ですね。
ちなみに、先ほどからちょくちょくういろうを引き合いに出していますが、実は「生せんべいこそがういろうや生八つ橋のルーツである」という説があるようです。
一方で、蜂蜜味の白い生せんべいは、すっきりと澄んだ優しい甘さでした。後を引かないすっきりとした甘さは、蜂蜜ならではですね。
パッと見ただけでは気付きませんが、実は生せんべいは生地を重ねて作っています。3層の生地を重ねることで間に空気が入り、その空気が生せんべいの旨味を増すのだそうです。口当たりがよくなるということですかね。
なお、今回生せんべいを購入したイオンモールナゴヤドーム前店では白と茶色のみを取り扱っていましたが、生せんべいには他にも緑色の抹茶味もあります。そちらも試してみたいですね。
ちなみに、このような巨大サイズ生せんべいもあります!
重量は260gです。生せんべいは100gあたり302kcalなのですが、単純計算するとこの巨大生せんべいは1枚785.2kcalということに… 参考までに松屋の牛めし並盛1杯のカロリーは732kcalです(笑)
これどうしよう…
知りませんよ1。
ちなみに「第2回全国和菓子大品評会大臣賞受領(昭和39年)」「第19回全国菓子博覧会名誉金賞受領(昭和52年)」「第21回全国菓子大博覧会内閣総理大臣賞受領(平成元年)」と、和菓子界の名誉ある賞を受賞してきたようです。
家康公への悲恋をきっかけに生まれた生せんべい
レトロ感あるパッケージからも、この生せんべいがロングランヒット商品であることが容易に想像できますが、そのルーツはかなり古く、桶狭間の戦いのあった1560年(永禄3年)まで遡ります。この生せんべいを巡っては、家康公への叶わぬ恋があったのです。
(以下は総本家田中屋のウェブサイトの「生せんべいの物語」を参考に記述しています。)
当時、徳川家康は桶狭間の戦いにおいて今川義元に加勢していましたが、織田信長の軍勢に押され、やむなく知多半島(母・伝通院のいる坂部城)まで逃れていました。そこから、叔母の嫁ぎ先である岩滑城を目指してさらに南下しますが、その道中で家康はすっかり疲労困憊になってしまいました。
そんな折に、家康はとある百姓家の軒先に干してあるせんべいを見つけました。物欲しそうな家康に、百姓家の娘・みつは、このせんべいが焼く前の生の状態であることを伝えますが、家康は生でも良いから食べたいと、せんべいを所望しました。
すると、その生のせんべいが旨いのなんの。家康は、岩滑城への滞在の間、せんべいを生のまま献上してほしいと百姓家に申し付けました。
後日。みつが生のせんべいを手に岩滑城へ向かうと、家康と再会しました。その天下をのむ気概と精悍な面持ちに心を奪われたみつは、家康を密かに慕うようになりました。
ですが、身分が違いすぎます。当時ではまず叶うことのない空しい恋です。家康が陣を整え三河に去った後、みつは恋の終わりを悟ってか、知多の山の緑に囲まれた美しい池に姿を消しました…
村人たちがみつの失踪に気付いた時にはもう遅く、みつは池の底に消え、池にはただ朝日を浴びてキラキラと輝く雲母が残るだけでした。それ以降、村人たちは、みつが家康に献上し続けていた生せんべいを作るようになったといいます。雲母にちなんで、生地を一枚一枚重ね合わせて…
いや、これは切なすぎますって…!みつが叶わぬ恋に絶望し命を絶ったのも悲しいですが、みつの死後、家康公が生せんべいをどう思っていたのか一切わからないのも悲しいポイントです。「知多に居た時に食べていた旨いやつ」という、戦乱の日々の中での楽しい思い出として残っていればみつも多少は浮かばれる気もしますが。
それにしても、生せんべいは家康公が愛したのもわかる美味しさでした。(さすがに当時家康公が食べたものと現在製造されているものとでは製法が違うとは思いますが)
空腹の限界で食べたファーストコンタクトはともかくとして、あれから継続して岩滑城に生せんべいを献上させつづけたというのは、よほど気に入ったとみえます。クッキーを焼くときに、焼く前の生地がやたらと旨そうに思えてくるあの現象みたいなものですかね(笑)
生せんべい まとめ
生せんべいは愛知県半田市の和菓子屋「総本家田中屋」が製造・販売する、知多半島を代表する銘菓です。「生せんべい」という名称ですが、焼いてせんべいになるわけでもなければ、ぬれせんべいのようなお菓子というわけでもありません。薄く弾力の強いういろうのような食感のお菓子で、実際にういろうのルーツであるという説もあるそうです。
無添加で作られており、蜂蜜や黒糖の優しい甘味を楽しめます。(抹茶味もあります)
知多半島を中心として、愛知県内各地の量販店やお土産店で購入可能なほか、総本家田中屋のWebサイトからお取り寄せも可能です。
総本家田中屋のWebサイトはこちら↓
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