名古屋市は公共交通機関が充実している都市です。特に「名古屋市交通局」の市バスと市営地下鉄は広範囲に路線網を張り巡らせており、自家用車を持っていないなまこマンの中の人はいつもバスや地下鉄のお世話になっています。
名古屋市交通局は1922年に設立され、実に100年以上も名古屋市民の足となってきました。そんな名古屋市交通局の歴史に触れられる、貴重な資料の数々を展示している資料館が、先日紹介した「市営交通資料センター」なのですが、今回は名古屋市のお隣・日進市にあるもう一つの名古屋市交通局の資料館「レトロでんしゃ館」にお邪魔しました。ここでは、かつて名古屋市民の足として活躍した車両が実際に展示されているのです!
お出かけ先にぴったり!レトロな電車の実物を見られる「レトロでんしゃ館」
地下鉄鶴舞線の終点・赤池駅の近くに、名古屋市営地下鉄の車両の整備を行う「名古屋市交通局日進工場」があります。レトロでんしゃ館はこの日進工場に隣接しています。
目印はこちらの巨大なシールドマシンのモニュメントです。
このモニュメントは、市営地下鉄4号線1の本山付近の工事に実際に使用されたシールドマシン(トンネルを掘る機械)の一部です。地下鉄の線路を2本通すのに、円形のトンネルを掘るとデッドスペースが大きくなってしまうので、このように円が2つくっついたような形状のシールドマシンでトンネルを掘ったのだそうです。
案内看板に従って進むと、レトロでんしゃ館が見えてきます。なお、レトロでんしゃ館には駐車場がないので、訪問の際には公共交通機関を利用しましょう。特に、地下鉄鶴舞線の利用がおすすめです。
というのも、レトロでんしゃ館の最寄り駅である赤池駅の改札内には、レトロでんしゃ館に持っていくと粗品と交換することのできる券が置かれているのです。
事務所の職員に券を渡すと、こちらのオリジナルステッカーがもらえます。
館内には名古屋市内を実際に走っていた名古屋市電(路面電車)の車両と、地下鉄の最初期の車両が静態保存されています。リニア・鉄道館やトヨタ博物館もそうですが、大きな車両がでかでかと保存されていて、それを間近で眺めることができるのは本当にテンションが上がります!
名古屋市のランドマークを忠実に再現した大きなジオラマも展示されています。こういうのもテンションが上がりますよね… 子供の頃には鉄道ジオラマに憧れがありましたが、自宅に展示スペースを用意するのが現実的でないということを子供ながらに察していました(笑)
明治から昭和にかけて活躍した「名古屋市電」
名古屋には日本で2番目に古い路面電車「名古屋市電」が走っていました。
名古屋市電は1974年に廃止されているため、現在の名古屋の街には市電の名残はあまり残っていないのですが、北は上飯田から南は名古屋港、西は中村から東は八事まで、かなり広い範囲に路線網が張り巡らされていたようです。
市電はこんな感じで名古屋の街を走っていたようです。この写真の場所は、広小路通を名古屋駅から少し西に進んだあたりです。先日長命うどん本店へ行ったときに同じ場所をバスで通ったのですが、やはり市電が走っていた名残はまったく感じられなかったですね…
車両は白と緑のツートンカラーに、ワンポイント的に赤があしらわれた可愛らしい外観です。電停も緑・白・赤のカラーリングが車両とマッチしていてとても良い感じです。
この車両は1400型という車両で、昭和12年に開催された「汎太平洋平和博覧会」の乗客を輸送するために「博覧会にふさわしい世界一の車両を作ろう」という意気込みで製造されたのだとか。
車内は板張りです。ものすごくレトロです。ブルーのベンチシートと、縁のゆるやかな曲線を描く手すりのデザインが良い感じです。
こちらは昭和30年代に製造された2000型という車両です。静音性に優れていたため「忍び足の電車で危ないので警笛を大きくせよ。」という市民の批判もあったようです。プリウスが売り出された頃みたいなエピソードですね…
1400型と同じような顔をしていますが、車内は完全に金属やリノリウムで作られており、これだけで一気に時代が現代に近づいたような感じがします。
展示されている市電の車両には、当時のものが再現された中吊り広告が吊られています。市電の廃止に関するお知らせや、市電に代わる新たな名古屋市民の足となった地下鉄の開業に関するお知らせが印象的でした。レールを使った記念文鎮って、公共交通マニアにはたまらないですね…!
市電は名古屋市民に様々な形で親しまれました。花電車というのは今で言うところのディズニーのパレードみたいなものですかね?そして市電と名鉄瀬戸線の軌道同士が交差する様子は絵面が衝撃的すぎます!
市電の一部車両は、退役後に、伊良湖沖に漁礁として沈められたのだそうです。
レトロでんしゃ館で、名古屋市電の車両の実物や、現役当時の写真を見て、改めて「知らなかった昔の名古屋の姿」を知ることができたような気がします。
イエローが可愛らしい「地下鉄100形」
レトロでんしゃ館には、市電以外にも、最初期の地下鉄車両である100形車両が展示されています。黄色一色で、少し丸みを帯びたフォルムが可愛らしいです!車体が黄色いのは「暗い地下を明るく走り抜けるように」という意図があるのだとか。
名古屋市営地下鉄の現在の開通区間のうち、名古屋~栄町1間が開通したのは1957年ですが、野並~徳重間が開通したのは2011年であり、実に50年近い差があります。ゆえに、全通までの間に車両もいろいろと入れ替わっているわけです。
内装の雰囲気は現在の車両と大きく変わらず、ベンチシートが向かい合うように設置されています。
こちらは2000年に大曽根~砂田橋間が開通した際に、ナゴヤドーム前矢田駅にて行われた開通セレモニーの記事です。当時中日ドラゴンズの若手選手だった福留孝介さんと岩瀬仁紀さんがセレモニーに参加しています。二人とも若いですね…
レトロでんしゃ館 まとめ
名古屋市交通局日進工場に隣接して、名古屋市交通局の資料館「レトロでんしゃ館」があります。かつて名古屋市内で活躍した名古屋市電の車両や、名古屋市営地下鉄の最初期の車両の実物が静態保存されており、展示車両は内部に入ることが可能です。
市電や地下鉄に関する写真資料もあり、現役だった当時に思いを馳せることもできます。
入場は無料です。来場の際には公共交通機関の使用が推奨されています。赤池駅にて配布されている券を事務室へ持っていくとステッカーと交換してもらえるので、地下鉄鶴舞線でのアクセスがおすすめです。
名古屋市街(中区丸の内)には名古屋市交通局のもう一つの資料館「市営交通資料センター」もありますが、市営交通資料センターが紙の資料や小物類の展示に重きを置いている一方で、レトロでんしゃ館はやはりかつて活躍した車両の実物を見られるのがポイントと言えますね。
名古屋市内各地を結ぶ交通手段としての役割は、市電から地下鉄へとバトンタッチして久しいです。地下鉄の車両も代替わりしています。今現在、よく乗っているあの車両やこの車両もいずれここに並ぶ日が来るのでしょうか… そう考えると、記録と記憶を残すこのような保存施設の存在は非常に重要であるように思います。
レトロでんしゃ館(名古屋市市電・地下鉄保存館)
愛知県日進市浅田町笹原30
営業時間:10:00~16:00
定休日:水曜日
※訪問時点での情報です。
レトロでんしゃ館のWebサイトはこちら↓
市営交通資料センターの紹介記事はこちら↓
コメント
札幌にも同様な資料館があり、最近リニューアルオープンしたそうなので行ってみたいと思っているんですけど、なかなか。
退役後の車両が漁礁になるなんて初耳でした(゜o゜)
レールの文鎮、実は私も持っています。もちろん名古屋のではないです。
同級生のお父さんが国鉄職員で亡くなった後にいただいた物です。
そういえば昨日100カメで東京メトロの管制室や運転手に密着していたけど面白かったです。都会の鉄道は毎日色々なことが起きて大変だなぁと思いました。
コメントありがとうございます。
退役後の列車が漁礁になるのはかなり珍しいケースらしく、名古屋と神戸にて1回ずつ行われたことがあるようです。一応、入り組んだ形状なので魚が寝床にしやすいのかもしれません。
公共交通マニアとして、レールの文鎮にはかなり憧れています!とはいえ、これが配られる瞬間というのはほぼ廃線記念だったりもするのが悩ましいです。
名古屋ではどちらかというと地下鉄よりも名鉄の方がいろいろ起こって大変そうです。名鉄名古屋駅が、通る列車の数に対してあまりにも狭すぎるので、ダイヤがすごく過密なんですよ。駅員さんがホームに出て手動でアナウンスや整理を行う様子は「すごいものをみた…」と思うことうけあいです。