※2019年秋頃に、店主ご逝去のため閉店しました。ご冥福をお祈りします。美味しかったです。ありがとう、おっちゃん。
徳島市の南西にある、勝浦郡勝浦町。
その山奥に幻の中華そば屋があると聞き、なまこマンは調査に向かった。
その名も「中華そば 美渓」。
県道16号線の旧道沿い、勝浦町の中心集落の西の外れにある。
山奥で食べる肉たっぷりの中華そば
すぐそばを勝浦川が流れ、周りを山に囲まれたロケーションはまさに秘境。
中華そば肉大(バラ肉・700円)
店主は気さくなおっちゃんで「中華そば肉大」を頼むと、丼の表面が肉で埋め尽くされるほどに肉が山盛りの、サービス精神満点の一杯を提供してくれる。
美渓に初めて訪れたのは2017年の秋だった。上の写真はその時に注文したものだ。丼を埋め尽くすほどに盛られたバラ肉に、食いしん坊の僕はいたく感動したものだ。まさか徳島の山奥に、こんなサービス満点の店があったとは。甘辛いタレの味がよく染みた、柔らかいバラ肉を味わった僕は大満足で店を後にした。
しかし後日、僕は某サイトで衝撃の真実を知った。
美渓の真骨頂は、豚バラ肉ではなくチャーシューにこそあったのだ!
美渓のチャーシューは、徳島のラーメン屋でも最強クラスのクオリティで、「肉(※チャーシュー)入りを頼まないとここに来た値打ちが半減する、それほどココのチャーシューは値打ちがある、と断言できます」とまで書かれていた。
確かに注文した時、おっちゃんは「チャーシュー終わってもうた!バラ肉でええ?」と気になる一言を言っていた…。
ここまで聞いたら、美渓のチャーシューをどうしても食べたくなったぞ…!
美渓のチャーシューにリベンジしたかった…
数か月後の2018年4月頃、僕はチャーシューを食べるために美渓にリベンジすることにした。Googleで検索したところによると、営業時間は11:00から。ならば11:00に間に合うように行けば食べられるだろう!
僕の住む徳島市某所から美渓まではおよそ26km。移動手段が自転車の僕にはそこそこの冒険だが、価値あるチャーシューを味わうためなら軽いものだ。
しかし。11:00に到着し、肉入りを注文した僕におっちゃんは
「チャーシュー終わってもうた!バラ肉でええ?」
▂▅▇█▓▒░(’ω’)░▒▓█▇▅▂うわあああああああ
確かに嫌な予感はしていたさ!だって、Googleに載っていた営業開始時間の11時よりも前から、明らかに食べてるお客さんがいたんだから!!
無いものは仕方がないので、僕はバラ肉入りを食べた。山盛りのバラ肉はボリューム満点で柔らかくて味が浸みていて相変わらず美味しい…。でも僕が食べたかったのはこれとは違うんだ…。26kmの自転車移動は何だったんだ…。満足感と虚しさとが入り混じった複雑な感情で、お会計の時におっちゃんに「何時に来たらチャーシュー食べられますか?」と聞いてみた。
するとおっちゃんは「10時ぐらいかなぁ?」と答えてくれた。
(営業開始時間より前じゃん!)と思いながらも、食べられなかったものは仕方がない。僕は再度のリベンジを誓い、店を後にした。
その日は勝浦町の一大イベント「ビッグひな祭り」が開催されていた。全国各地から集められた大量のひな人形が巨大な雛壇に飾られた様子は圧巻。スマホカメラを向けると顔認証がこれでもかと仕事をする
三度目の挑戦
やはり美渓のチャーシューを諦めきれなかった僕は、2018年8月頃に三度目のリベンジをすることにした。今度はおっちゃんの言っていた10時ごろに狙いを定め、自転車を走らせた。
しかし、店舗には人っ子一人いない。あれ?おかしいぞ?定休日ではないはずなのに…
「もしかしたら11時に営業を始めるかもしれない」と思って馬鹿正直に店の前で1時間待ったが、結局開く気配は無かった。
結局その日は諦め、道の駅「ひなの里かつうら」にてうどんを食べた。
店主のおっちゃんの体調が悪く、リハビリ等のために店が不定期営業になっていたことを知ったのは、帰宅した後の事だった。
しかも、営業頻度は月に数回というところまで落ちていて、いつ営業するかは店主のおっちゃんや近しい人物から情報を得ないとわからないというような状態になっているようだ。
それゆえに、美渓は「幻の中華そば店」と言われるようになったのだ。
四度目の正直
2019/7/15訪問
前回のチャレンジからおよそ1年。僕は思い立って、また美渓に行ってみることにした。
営業しているかどうかは正直賭けだった。しかし祝日であったことと、三連休で唯一雨の降らない日であったことから集客が見込めるのではないかと判断して、行ってみることにした。
「何、やってなくてもそれはそれで美味しいさ!ブログのネタになる!」
ブログを始めてから、いろいろなことを「ネタにできるかできないか」という観点で見るようになった。なので、不運も「それはそれで美味しい」と捉えることができるようになり、ある意味人生が豊かになったかもしれない。
そんな無敵の僕が勝浦川沿いにロードバイクを走らせる。少しずつ美渓に近づいてきたとき、
道路にたくさんの車が停まっていた!そして、店の入り口にたくさんの人が列を作っていた!
ビンゴだ!!
僕は幸運にも、月に数日の営業日を引き当てることができたのだ!!
逸る気持ちを抑えながら、僕も列に並んだ。ちなみに時計は10時半。やっぱり10時ごろから営業しているということだ(笑)
列に並んでいると、店内からよく通るおっちゃんの声で「終わってもうた!」と聞こえてきた。
しかしよく聞くと、終わったのはチャーシューではなくご飯だったらしくてほっと胸を撫で下ろした。
列は前へ前へと進んでいき、ついに店内に入ることができた。注文を聞かれ、迷わず「肉大のチャーシューお願いします!」と答える。おっちゃんたちの反応を見るに、どうやらまだあるようだ。よかった!
そしてついに、夢にまで見たチャーシューとの感動の対面を果たすことができた!
中華そば肉大(チャーシュー・800円)
すごい!たくさんのチャーシューが丼を埋め尽くしている!!
想像を上回る、圧巻の一杯だ!
チャーシューは香ばしく炙られ、脂身は柔らかくジューシーで身の部分はほろりとした食感。タレの味がよくしみた絶品だ。そんなチャーシューが、これでもかといわんばかりに大量に入っている。ここは天国か。天国は勝浦にあったのか。
スープはほんのり甘辛くも後味がすっきりとした醤油ダレに豚骨のうまみが合わさっている。こってりしすぎず、甘辛さもしつこくなく、後口が良い。
そこに柔らかめのストレート細麺が、良い感じでスープを吸収している。
チャーシューのクオリティはとにかく最高で、遠くから来た達成感と、ようやく味わえた感動も合わさって、この一杯は僕の中で、2019年に食べた中のベストラーメンに輝いた!
訪れているお客さんは地元の方が大半のようで、おっちゃんや他の店員と親しげに会話をしていた。また、明らかにメニューに載っていないものをオーダーしている常連客もおり、地域で熱心に愛されている店なのだというのがとても伝わってきて、僕も食事をしながらとても微笑ましい気持ちになった。
店内はまるで親戚の家の台所でラーメンを食べているような気さくさ…有り体に言うと散らかっているので気になる方は気になるかもしれないが、おっちゃんの気さくな人柄ゆえ、アットホームな雰囲気の中で食事を楽しめる。
最高のチャーシューを味わえて、本当によかった。ここのチャーシューは徳島最強と言っても過言ではない!ぜひ一度味わってもらいたい。
これからもいろいろな方々に愛される店であり続けてほしい。そして、おっちゃんには健康に長く店を続けてほしい!
ごちそうさまでした。
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